揺さぶり

「何かここに絵でも描いといてよ」

濃いピンクの画用紙に書いたちゃちな料金表の空きスペースを指さし、黒のサインペンを手渡した。横目で覗き見ると、ミハルは年の割には少し幼い、ちょうど女子小学生が描くようなアンバランスなうさぎやハートをためらいながら描いていた。それを見て僕は肝を冷やすような思いがした。目の前に居るミハルはやはり生身のおんななのだ。そのおんなにも未だ自分のことをよく知らないで、親の手の中に柔らかく包まれている子どもだったときもあったのだ。例えば画用紙にクレヨンで太陽や花を書き殴り、無邪気に見せびらかすような……。それなのに僕には到底手の届かないことを、彼女はこともなげにケイケンしている。少しだけ不気味であり、それでもどうにかして守ってあげたかった。それは無償で無条件の存在愛だった。ミハルにそんなことして欲しくなかった。視界の端には体の線に沿う滑らかなフレンチスリーブのワンピースからにょっきりはえているミハルの生白い太ももがあり、僕にはその肉が急に現実味を帯びたような気がした。そして薄布で隠れたその肉を想像することで僕はミハルと一体になれるような気もした。