プールサイドフロー

平日だから、少しは人も減っているだろうと思っていたが、相変わらずカップルや家族連れで満員だった。最近雨続きで、ろくに外出出来なかったその反動かもしれない。今日は久しぶりに良い天気だ。良いプール日和だ。ウォータースライダーの前には行列が出来ているので、しばらく流れるプールに浮かんでいようと思う。ハイビスカス模様のピンクの浮き輪を借りた。濡れた階段を滑らないように降りる。何年かぶりに浸かったプールの水はとてもぬるかった。程よい抵抗を感じながら水の中を歩く。少しはカロリー消費されないかな。目の前の小学生だろう男の子が、ビート板の上に乗ろうとしている。三枚重ねのビート板の浮力はかなりのもんだろう。当然乗れるわけもなく、ビート板は吹き飛んだ。そのうちの一枚が私の腹にぶつかった。ビート板がボヨンと反発した。今思えば、十代の頃はどれだけ食べても太らなかった。飛んできたビート板を渡してやる。「あざっス……」日に焼けた少年は無愛想にお礼の言葉を言って受け取った。人が放つ微弱な波形に身を委ねている。このままいつまでも流れるプールの波に流されていたい。私は何を考えるわけでもなく、ただ浮かんでいた。何周もしていると、私と同じように流れるプールで浮遊しているだけの人々を見かけるようになった。とくにイルカのフロートにまたがった茶髪の女の子なんか、顔も覚えてしまった。彼女の方も私のことを覚えてしまったのか、すれ違いざまに目が合ってしまった。彼女はニヤッと笑って、小さく頭を下げた。接点もなく、全くの他人な上に話したことすらないが、ぷかぷかと繰り返し漂っている仲間の一人だ。まだこのままでいい。お腹が減ったら、売店でホットドッグを買って帰ろう。